実家じまいの進め方
共有名義の実家を売る・手放す|全員の同意が要る場面と、連絡が取れない共有者がいるときの公的な手続き
共有名義の実家を新潟で売る・手放すときに、全員の同意が要る場面、自分の持分だけ売れるか、共有物分割、相続人が多い・所在が分からないときの裁判所の手続き(所在等不明共有者の持分取得・譲渡など)を、法務省・裁判所・e-Govの公式情報で整理します。
更新日: 2026-10-11/この記事には広告(PR)を含みます。広告について

**結論:共有名義の実家を丸ごと売るには、共有者全員が売る意思を持つことが前提です。**共有者の一人が反対していると、実家全体は売れないものとして進めます。法務省の資料も、この前提で制度を説明しています。
全員で決められないときの道は、3つあります。
- 話し合いで共有を解消する(持分の買取り、誰かが取得して代償金を払う、など)
- 裁判所に共有物の分割を求める(相続で共有になり、遺産分割が済んでいないときは、先に遺産分割)
- 自分の持分だけを手放す
共有者の一部の所在が分からないときは、令和5年(2023年)4月1日に始まった裁判所の手続きがあります。ただし、「連絡がつかない」だけでは使えません。住民票の調査など、必要な調査を尽くしても所在が分からない場合に限られます。相続で共有になった持分は、相続開始から10年が過ぎていることも条件です。
**次の一歩は、登記事項証明書を取り、共有者と持分を確認することです。**そのうえで、共有者全員の意向を聞きます。
内容は、2026年10月11日時点の法務省・裁判所・e-Gov法令検索・法務局・国税庁などの公式ページで確認できたものだけです。確認できなかった項目は「※確認中」と書きました。この記事は、制度の一般的な説明です。個別の事情にあてはめた判断は、していません。家族でできることと、専門家に相談することを分けて書きました。当サイトは、専門家を紹介して紹介料や報酬を受け取ることはありません。特定の会社や事務所も、勧めません。
この記事で分かること
- 共有名義の実家を売るときに、全員の同意が要る場面
- 自分の持分だけを売れるのか
- 共有をやめる3つの方法(話し合い・裁判所の分割・遺産分割)
- 相続人が多い、連絡が取れない、所在が分からないときの公的な手続き
- 家族でできることと、専門家に相談すること
- 期限のある項目と、相談先
県外に住む子ども世代が、きょうだいやおじ・おばと実家を共有している場面を想定しています。
家族でできることと、専門家に相談すること
| 場面 | 家族でできること | 司法書士・弁護士に相談すること |
|---|---|---|
| 状況の整理 | 登記事項証明書を取る。共有者の一覧を作る。話し合いの内容を、書面やメールで残す | 名義と持分の読み方。相続登記や遺産分割の進め方 |
| 話し合い | 売りたい人、住みたい人、持ち続けたい人を聞く。持分の買取りなどの案を出す | 合意の内容を文書にする方法。代償金や分け方の決め方 |
| 連絡が取れない共有者 | 手紙を書面で送り、記録を残す。戸籍や住民票で、相続人や住所を調べる(請求できる範囲は市区町村の窓口で確認) | 裁判所の手続きが使えるか。申立書や証拠書類の作成 |
| 話し合いがまとまらない | 調停や裁判の前に、費用と時間を専門家に聞く | 共有物分割・遺産分割の調停や訴え。持分だけを手放す場合の進め方 |
共有名義になる理由
実家の名義が複数人になる主な理由の一つは、相続です。相続人が複数いると、遺産の不動産は、原則として相続人の共有になります(民法898条1項)。この共有を「遺産共有」と呼びます。
遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、共有者が増えます。法務省の資料は、土地の共有者が「ねずみ算式に増加」すると説明しています。共有者が多くなったり、一部の所在が分からなくなったりすると、売却や管理に必要な同意を得ることが難しくなります(法務省)。
共有には、2つの種類があります。
| 種類 | 内容 | 解消の方法 |
|---|---|---|
| 遺産共有 | 相続で生じた共有。遺産分割が済んでいない状態 | 遺産分割(協議、または家庭裁判所の調停・審判) |
| 通常の共有 | 買った、贈られた、遺産分割で共有と決めた、などの共有 | 共有物分割(協議、または裁判所の裁判) |
遺産共有の持分は、法定相続分(遺言で指定があれば指定相続分)で数えます(民法898条2項)。きょうだい3人が相続し、法定相続分が各3分の1なら、持分も各3分の1です。
実家が相続でできた共有なら、まず、遺産分割が済んでいるかを確認してください。
最初に確認する4つのこと
売る話を始める前に、次の4点を確認します。
- 共有者と持分: 法務局の登記事項証明書で、名義人の氏名と持分の割合を見ます。
- 相続登記が済んでいるか: 名義が亡くなった方のままなら、先に相続登記が要ります。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内の義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(法務省)。令和6年4月1日より前に相続が始まった不動産は、令和9年(2027年)3月31日までに登記します。令和6年4月1日以後に取得を知ったときは、知った日から3年以内です。遺産分割が成立したときも、その日から3年以内に登記が要ります。
- 共有者の連絡先: 全員の住所と連絡先が分かるか。分からない人がいるか。
- 全員の意向: 売りたい人、住みたい人、持ち続けたい人が、それぞれ誰か。
相続登記の手続きは、次の記事にあります。
状況別の進み方
| 状況 | 使える道 | この記事の該当箇所 |
|---|---|---|
| 全員と連絡がつき、全員が売りたい | 全員が売主になって売る | 「全員で売る」 |
| 全員と連絡がつくが、意見が割れる | 話し合い、持分の買取り、共有物分割、遺産分割 | 「共有をやめる方法」 |
| 返事をしない共有者がいる | 管理に関する事項は、裁判所の決定で進められる場合がある。売却には使えない | 「連絡が取れない共有者がいるとき」 |
| 所在が分からない共有者がいる | 持分取得、持分譲渡の権限付与、変更・管理の裁判など | 「連絡が取れない共有者がいるとき」 |
| 相続人が多く、全体が分からない | まず戸籍で相続人を調べる。そのうえで上の道を選ぶ | 「連絡が取れない共有者がいるとき」 |
全員で売る
全員の同意が要る理由
共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が必要です。形状や効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は除かれます(民法251条1項)。管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項)。
実家を丸ごと売ることが、このどれにあたるかは、条文には書かれていません。そこで、法務省の資料の説明を見ます。
法務省の資料は、新しい制度ができる前は、所在等不明の共有者がいると、不動産全体を売ることができなかったと説明しています。今は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を得る方法があります(民法262条の3)。それでも、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することが条件です。一部の共有者が持分の譲渡を拒めば、条件が成り立たず、譲渡できません。
つまり、実家を丸ごと売るには、共有者全員の売る意思が必要なものとして進めるのが基本です。個別の事情にあてはめた判断は、司法書士・弁護士に確認してください。
法務省の資料は、不動産全体を売って持分に応じて代金を受け取る方が、共有持分だけを売って得る代金よりも、高額になりやすいとも書いています。
共有のまま売る流れ
共有のまま売る流れは、次のようになります。進め方は、単独名義の実家を売る場合に近くなります。
| 順番 | やること | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 登記事項証明書で、共有者と持分を確認する | 名義が亡くなった方のままなら、相続登記が先 |
| 2 | 全員で、売る方針と代表者を決める | 話し合いの内容は、メールや書面で残す |
| 3 | 査定を取り、媒介契約を結ぶ | 共有者が依頼者になる。連名にするか代表者に任せるかは、不動産会社や専門家に確認 |
| 4 | 片付けと、古家付きか更地かを決める | 費用の負担の分け方を、先に決める |
| 5 | 売買契約を結ぶ | 共有者全員が売主になる |
| 6 | 所有権移転の登記をする | 売主(登記義務者)の登記識別情報などが要る |
| 7 | 代金を分ける。確定申告をする | 持分に応じて分けるのが基本。税は各自の申告 |
所有権の移転など、権利に関する登記を申請するときは、原則として登記義務者(売主)の登記識別情報が必要です(法務局)。共有では売主が複数になるため、必要な書類を事前に確認します。※確認中: 共有で売るときの必要書類(司法書士・法務局)
査定の取り方、媒介契約の3種類、仲介手数料の上限は、次の記事にまとめています。
- 新潟の空き家を買い取ってもらうには|買取と仲介の違い・再建築不可・査定書類
- 新潟市の実家を売る流れは7段階|期間・費用・窓口と3,000万円控除の期限
- 長岡市の実家を売る流れは6段階|相続登記から3,000万円控除・相談先まで
共有の場合は、全員の合意を書面やメールで残しておくと、会社とのやりとりを進めやすくなります。国土交通省の標準媒介契約約款では、不動産会社が売買すべき価額や評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにして説明することになっています。査定書の金額だけで決めず、根拠を聞いてください。買取で売る場合も、複数の会社の条件を書面で比べます。
売ったあとの税
売った利益にかかる税は、売った人ごとの申告になると考えられます。相続した空き家の3,000万円特別控除には、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなど、要件があります。売る期限は令和9年12月31日までです。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が、これより早いときは、そちらが期限になります。相続人が3人以上いる場合は、令和6年1月1日以後の譲渡で、控除が2,000万円までになります(国税庁)。
共有で売る場合に、各共有者がどう使えるかは、国税庁のページには書かれていません。税務署か税理士に確認してください。※確認中: 共有で売る場合の特例の適用(税務署・税理士)
自分の持分だけを売れるか
共有者は、自分の持分を単独で手放せるのでしょうか。条文と法務省の資料で確認できた範囲は、次のとおりです。
- 民法206条は、所有者は法令の制限内で、自由に所有物を処分できると定めています。
- 民法251条1項は、共有物に変更を加えるときに、他の共有者の同意が要ると定めています。持分の譲渡については、定めていません。
- 今回確認した民法の条文(206条、249条〜258条の2、262条の2、262条の3)の中に、持分の譲渡に、他の共有者の同意を求める定めは見当たりませんでした。
- ただし、「持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れる」と明示した法務省の資料は、確認できていません。
そのため、持分だけを売れるか、売ると何が起きるかは、司法書士・弁護士に確認してください。※確認中: 共有持分のみの譲渡に他の共有者の同意が要らないこと(法務省の公式解説。司法書士・弁護士に確認)
持分を手放す方法には、売る以外に、放棄があります。共有者の一人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。放棄の手続きや税の扱いは、司法書士・税理士に確認してください。
持分を買った人は、新しい共有者になります。共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条)。共有者の一人が共有物について他の共有者に持つ債権は、その他の共有者から持分を引き継いだ人にも行使できます(民法254条)。
持分だけを買う人が多いか、いくらで売れるかを示す公的な資料は、確認できませんでした。実家を使い続けたい他の共有者がいる場合は、まず、その人に持分を買い取ってもらえないかを話し合う方法もあります。※確認中: 共有持分のみの売却の価格・買い手の付きやすさ(公的な目安なし。司法書士・弁護士に相談)
自分の持分だけを手放す前に、次のことを確認してください。
- 他の共有者との関係が、その後どう変わるか
- 持分を取得した人から、分割を求められる可能性があること
- 相続登記が済んでいること(売買には名義が必要)
- 税の扱い
共有をやめる方法
1. 話し合い(協議)
共有者全員で、分け方を決めます。法務省の資料は、方法を次のように整理しています。
- 現物分割: 共有物を、持分の割合に応じて物理的に分ける。
- 賠償分割: 共有物を一人(または複数)の所有にし、取得した人が他の共有者に代償金を払う。
- 売って代金を分ける: 全員が売ることに合意すれば、売った代金を、持分の割合などで分けられます。裁判による競売分割も、競売で第三者に売り、代金を持分の割合で分ける方法です(法務省)。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。ただし、5年を超えない期間であれば、分割しないと契約することもできます(民法256条)。
2. 裁判所に分割を求める
話し合いがまとまらない、または話し合いができないときは、分割を裁判所に請求できます(民法258条1項)。共有者の一部の所在が分からず、話し合いができない場合も、請求できます。
ただし、相続で共有になり、遺産分割が済んでいない持分は、原則として、この共有物分割の裁判の対象になりません。先に遺産分割をします(民法258条の2第1項)。相続開始から10年が過ぎた場合は、次の「3」に書きました。
裁判所が命じる分割の方法は、民法258条で次のように定められています。競売は、現物分割も賠償分割もできない場合などに限られます。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 共有物の現物を分ける |
| 賠償分割 | 共有者に債務を負担させ、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる |
| 競売 | 現物分割も賠償分割もできないとき、または分けると価格が著しく下がるおそれがあるとき |
裁判所は、金銭の支払い、物の引渡し、登記義務の履行などの給付を命じることもできます(民法258条4項)。
民事調停は、話し合いによる解決を、裁判所で行う手続きです。調停調書は、確定した判決と同じ効力を持ちます(裁判所)。裁判所のページには、共有物分割の例は書かれていません。使えるかどうかは、裁判所の窓口か専門家に確認してください。
新潟地方裁判所には、本庁のほかに、三条、新発田、長岡、高田、佐渡の各支部があります。申立書をどこへ出すかは、新潟地方裁判所の「申立書提出先一覧」で確認できます。
3. 遺産共有は、遺産分割で解消する
相続で生じた共有は、本来、遺産分割で速やかに解消すべき暫定的な状態です(法務省)。遺産分割は、協議のほか、家庭裁判所の調停・審判で行います。
遺産分割で使う相続分には、期限があります。
- 相続開始から10年を経過したあとの遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく、法定相続分(または指定相続分)によります(民法904条の3)。具体的相続分とは、生前贈与などを考慮して、法定相続分を修正した割合です(法務省)。
- 10年が過ぎる前に、家庭裁判所へ遺産分割を請求していれば、例外になります。10年の期間が終わる前の6か月以内に、請求できないやむを得ない事由があった場合にも、例外があります。
- 令和5年4月1日より前に相続が始まった場合は、経過措置があります(法務省)。施行時から少なくとも5年の猶予があり、基準日は、原則として令和10年(2028年)3月31日です。相続開始から10年がこの日より後に来るときは、10年が過ぎる時が基準になります。この基準日までに家庭裁判所へ遺産分割を請求していれば、具体的相続分による分割が続けられます。
相続開始から10年を過ぎたときは、遺産共有と通常の共有が混ざっている場合に、共有物分割の裁判でまとめて解消できます(民法258条の2第2項)。ただし、遺産分割の請求がされていて、相続人が異議を申し出ると、この方法は使えません。異議は、裁判所から請求があった旨の通知(訴状の送達)を受けた日から2か月以内に出します(法務省)。
細かな扱いは、事案で変わります。弁護士か司法書士に確認してください。
連絡が取れない共有者がいるとき
「連絡がつかない」と「所在等不明」は違う
法務省の資料が使う「所在等不明共有者」は、必要な調査を尽くしても、氏名や所在が分からない共有者です。氏名が分からない場合も含まれます。不動産の場合は、登記簿に氏名や所在が書かれていないだけでは足りません。住民票の調査など、必要な調査を尽くしても分からないことを、裁判所に証明する必要があります。
手紙を出して返事がない、電話に出ない、というだけでは、所在等不明の手続きの対象にはなりません。返事をしない共有者には、別の制度があります。
制度の比較
次の手続きがあります。民法251条2項から262条の3まで、264条の2と264条の8は、令和5年4月1日に施行された民法の改正で整いました(法務省)。不在者財産管理人は、従来からある制度です。
| 制度 | できること | 主な条件 | 公告・期間 | 申立先 |
|---|---|---|---|---|
| 変更・管理の裁判(民法251条2項、252条2項1号) | 所在等不明共有者以外の共有者の同意で変更を加える。持分の過半数で管理を決める | 所在等不明の証明が必要。所在等不明共有者が持分を失う行為(抵当権の設定など)は不可 | 1か月以上の異議届出期間と公告 | 共有物の所在地の地方裁判所 |
| 賛否不明の共有者がいる場合の管理(民法252条2項2号) | 賛否を明らかにしない共有者以外の持分の過半数で、管理を決める | 事前に、期間(通常は2週間程度)を定めて催告する。変更行為や持分を失う行為は不可 | 1か月以上の賛否明示期間と通知 | 共有物の所在地の地方裁判所 |
| 所在等不明共有者の持分の取得(民法262条の2) | 申立人が、所在等不明共有者の持分を取得する | 所在等不明の証明。時価相当額の供託。遺産共有は相続開始から10年を経過していること | 3か月以上の異議届出期間と公告 | 不動産の所在地の地方裁判所 |
| 所在等不明共有者の持分の譲渡権限(民法262条の3) | 所在等不明共有者の持分を含めて、不動産全体を特定の第三者に売る権限が付く | 他の共有者全員が持分の全部を譲渡する。時価相当額を持分に応じて按分した額の供託。遺産共有は相続開始から10年を経過していること | 3か月以上の異議届出期間と公告 | 不動産の所在地の地方裁判所 |
| 所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令(民法264条の2、264条の8) | 所在不明の共有持分について、裁判所が選ぶ管理人が管理する。管理人は、裁判所の許可を得て、その持分を売却することもできる。実家全体を売る制度ではない | 利害関係人が申立て。調査を尽くしても所有者が分からない。管理費用の確保のため、基本的に予納金が要る。土地と建物の両方を対象にするには、双方の申立てが必要 | 1か月以上の異議届出期間と公告 | 不動産の所在地の地方裁判所 |
| 不在者財産管理人(民法25条) | 従来の住所や居所を去った人の財産を、管理人が管理する | 家庭裁判所が選ぶ。財産全般が対象 | 公告の期間は、確認できていません | 家庭裁判所(管轄は窓口で確認) |
所在等不明共有者の持分の取得
共有者が、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を取得する制度です(民法262条の2)。法務省の資料にある例を、かみくだくと次のとおりです。
- 申立人が複数のときは、各申立人が、自分の持分の割合で、取得分を分け合います。
- 所在等不明共有者が、異議を届け出て所在が分かれば、申立ては却下されます。
- 取得の時期は、裁判が確定した時です。
- 所在等不明共有者は、取得した共有者に、時価相当額の支払いを請求できます。支払いは、実際には供託金から受ける形です。差額があれば、別に訴訟を起こすなどして請求できます。
- 異議届出期間が終わる前に、共有物分割の請求(または遺産分割の請求)があり、所在等不明共有者以外の共有者が異議を届け出ると、そちらが優先され、持分取得の申立ては却下されます。
所在等不明共有者の持分の譲渡権限
共有者A・B・Cのうち、Cが所在等不明のとき、Aの申立てでAに権限が付き、土地の全体を第三者に売る、という使い方です(法務省の例)。
- 権限が使えるのは、不動産全体を特定の第三者に売るときだけです。
- 他の共有者が一人でも持分の譲渡を拒むと、条件が成り立たず、売れません。
- 所在等不明共有者の持分は、直接、買主に移ります。申立人がいったん取得するわけではありません。
- 売る行為は、裁判の効力が生じた時から、原則2か月以内にする必要があります。裁判所が延ばすことはできます。
売却を前提とする場合は、この制度のほうが、持分の取得を経るよりも手間が少ない、と法務省は説明しています。
変更・管理の裁判
共有地を第三者に貸すような場合に使います。法務省の例は、次のとおりです。
- A〜Eが共有する土地で、C・D・Eの所在が、必要な調査を尽くしても分からないとき。裁判所の決定を得て、A・Bは、建物所有目的で土地を貸す(変更)ことができます。全員一致ではなく、A・Bの同意で足ります。
- A〜Eが各5分の1ずつ共有する建物で、D・Eの所在が分からないとき。A・B・Cの持分の過半数で、賃借期間3年以下の定期建物賃貸借(管理)を決められます。
法務省の例は、賃貸です。売却には、持分の譲渡権限(民法262条の3)の制度が用意されています。
返事をしない共有者がいるとき
賛否を明らかにしない共有者がいる場合は、裁判所の決定を得て、その共有者以外の持分の過半数で、管理に関する事項を決められます(民法252条2項2号)。
- 事前に、共有者が他の共有者に、相当の期間(通常は2週間程度)を定めて、賛否を明らかにするよう催告します。
- 裁判所が、1か月以上の賛否明示期間を定めて通知します。
- 変更行為や、賛否を明らかにしない共有者が持分を失う行為(抵当権の設定など)には、使えません。
法務省の資料は、証拠として残すため、催告を書面などで行うことが大切だと書いています。
手続きにかかる費用と期間
次の金額と書類は、東京地方裁判所の案内にある例です。新潟地方裁判所の金額と書類ではありません。
| 項目 | 持分取得の申立て(東京地裁の例) | 変更・管理の申立て(東京地裁の例) |
|---|---|---|
| 申立手数料 | 収入印紙1,000円×対象の持分の数×申立人の数 | 収入印紙1,000円×対象の共有物の数 |
| 予納金(官報公告費用) | 7,134円から。内容で変わる | 7,134円から。内容で変わる |
| 郵便切手 | 6,000円分。共有者が1名増えるごとに2,178円分を追加 | 同左 |
新潟地方裁判所の郵便料及び予納金一覧(令和8年5月21日〜)には、この手続きの行は見当たりませんでした。同じ一覧に載っている「所有者不明土地等管理命令」は、郵便切手が6,000円で、予納金は、裁判所が定める額(申立前に相談)とされています。※確認中: 新潟地方裁判所での、持分取得・変更管理の申立ての予納金と郵便切手の額(新潟地方裁判所の窓口)
東京地方裁判所の案内にある、申立てに必要な書類は、次のとおりです。
- 不動産の登記事項証明書
- 所有者・共有者の探索等に関する報告書
- 共有者の所在が分からないことを裏付ける資料の写し(住民票、戸籍謄本、返却された郵便物、捜索願、他の共有者から聴取した書面など)
- 不動産鑑定書、簡易鑑定書、または固定資産税評価証明書(持分取得の場合)
- 持分が相続財産のときは、戸籍謄本や、家事調停・遺産分割協議の資料の写し
新潟地方裁判所で、同じ書類を求められるかは、申立前に確認が要ります。※確認中: 新潟地方裁判所での申立ての必要書類(新潟地方裁判所の窓口)
申立てから裁判までの期間は、公告の期間(1か月以上または3か月以上)が最低限かかることが分かっています。全体の期間の公的な目安は、確認できませんでした。※確認中: 申立てから裁判までの標準的な期間(新潟地方裁判所の窓口)
相続人が多い、相続人が分からないとき
数次相続(相続が何代も続くこと)で、相続人が多数になり、一部の所在が分からない例が、法務省の資料に出てきます。
- 相続人は、戸籍で調べます。
- 所在は、住民票などの公的な記録で調べます。法務省の資料は、戸籍・住民票の収集の負担が大きいと説明しています。
- 調べても分からない相続人がいるときは、上の表の手続きが検討の対象です。
- 遺産共有で、相続開始から10年を経過していないときは、持分の取得も譲渡も、裁判所はできません(民法262条の2第3項、262条の3第2項)。10年が過ぎる前でも、所在不明の相続人の持分について、所有者不明土地・建物管理人を選ぶ方法はあります(法務省)。
共有のままにしておくと
共有のままでも、次のルールで、実家を使えます。
- 各共有者は、共有物の全部を、持分に応じて使えます(民法249条1項)。
- 共有物を使う共有者は、別段の合意がなければ、他の共有者に、自分の持分を超える使用の対価を償還する義務があります(民法249条2項)。
- 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物を使います(民法249条3項)。
- 保存行為(修繕など)は、各共有者が単独でできます(民法252条5項)。
- 形状や効用の著しい変更を伴わない変更(軽微な変更)は、持分の過半数で決められます。短い賃借権の設定も同様です。土地は5年、建物は3年、樹木の植栽・伐採を目的とする山林は10年を超えない範囲です(民法252条4項)。借地借家法が適用される賃借権は、基本的に共有者全員の同意が必要です(法務省)。
- 共有者は、過半数で、共有物の管理者を選べます(法務省)。
- 各共有者は、持分に応じて、管理の費用を払います(民法253条1項)。1年以内に払わないと、他の共有者が、相当の償金を払ってその人の持分を取得できます(民法253条2項)。
一方で、共有のまま放置すると、次の問題が起きます。
- 相続が重なり、共有者が増える。
- 共有者の一部が所在不明になると、売却・変更の同意が取れなくなる。
- 空き家の管理は、所有者の責任と、新潟県は案内しています。共有の場合に、誰がどこまで責任を負うかは、県のページには書かれていません。専門家に確認してください。
冬の管理は、次の記事を見てください。
期限の一覧
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 相続で不動産を取得したと知った日から3年以内 | 相続登記の申請義務。遺産分割が成立したときは、その日から3年以内にも登記が要る |
| 令和9年(2027年)3月31日 | 令和6年4月1日より前に相続が始まった未登記の不動産の登記期限。令和6年4月1日以後に取得を知ったときは、知った日から3年 |
| 相続を知った日から3か月以内 | 相続放棄の申述(裁判所)。期間の伸長の申立てもできる |
| 相続開始から10年 | 遺産分割で、原則として法定相続分によるようになる(民法904条の3)。遺産共有の場合は、持分取得・譲渡の制度も使えるようになる。共有物分割の裁判でまとめて解消できるようにもなる(民法258条の2第2項) |
| 令和10年(2028年)3月31日 | 令和5年4月1日より前に相続が始まった場合の、具体的相続分による遺産分割の経過措置の基準日。この日までに家庭裁判所へ請求していれば、具体的相続分による分割が続けられる。相続開始から10年がこの日より後に来るときは、10年が過ぎる時が基準 |
| 令和9年12月31日 | 相続した空き家の3,000万円特別控除で、売る期限の上限。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が、これより早いときは、そちらが期限(国税庁) |
相談先
個別の判断は、司法書士・弁護士など、専門家に相談します。この記事では、判断をしません。
| 相談したいこと | 窓口 | 公式に確認できたこと |
|---|---|---|
| 相続登記、遺産分割、裁判所に出す書類 | 新潟県司法書士会 相続登記相談センター(0120-13-7832) | 受付は平日10時〜12時、13時〜16時。相談は無料。面談は毎週水曜の午後、予約制。協議がまとまらず裁判手続きが必要な場合に、裁判所提出書類を作成する業務も行うと案内している(無料相談の対象かは明記なし)。本人申請の書類作成の助言・確認は対象外 |
| 共有者との交渉、裁判 | 新潟県弁護士会(025-222-5533) | 法律相談料は原則30分5,500円(税込)。相談内容や資力によっては無料のことがある。予約は電話 |
| 法律の総合案内 | 法テラス サポートダイヤル(0570-078374) | 平日9時〜21時、土曜9時〜17時。弁護士・司法書士による無料法律相談や、費用の立替えの案内ページがある。条件は法テラスの案内で確認 |
| 空き家全般 | 新潟県 都市政策課(025-280-5428)。にいがた空き家管理活用サポーター | 売買・賃貸、管理、除却・解体、相続、活用の分野ごとに、登録された個人・団体がいる。相談料が発生する場合がある |
| 売る場合の査定や契約 | 不動産会社、宅地建物取引業の団体 | 窓口は、新潟市・長岡市の記事にある |
相談の前に、次のものを用意すると、話が進みます。
- 登記事項証明書(名義人と持分が分かるもの)
- 固定資産税の納税通知書
- 共有者の一覧(氏名、続柄、住所、連絡が取れるか)
- 相続関係の分かる戸籍など(手元にあれば)
- これまでの話し合いのメモ
共有名義の実家のよくある質問
Q. 共有者の一人が反対しています。実家を売れますか?
丸ごと売るには、全員の売る意思が必要なものとして進めます。家族ができることは、反対の理由を聞くことです。住み続けたい、持分を買い取りたい、といった希望が分かれば、持分の買取りや代償金の話し合いに進めます。
話し合いで解決しないときは、共有物の分割を、裁判所に求める方法があります(民法258条)。相続で共有になり、遺産分割が済んでいない場合は、先に遺産分割です(民法258条の2)。自分の持分だけを手放す方法もあります。どの道が合うかは、司法書士・弁護士に相談してください。
Q. 兄弟の一人と連絡が取れません。売却を進められますか?
手紙や電話で連絡がつかないだけでは、所在等不明共有者の手続きは使えません。住民票などで調べても所在が分からない場合に限り、使えます。売却を前提とするなら、持分の譲渡権限の制度(民法262条の3)があります。この制度は、所在等不明共有者以外の共有者全員が、持分の全部を譲渡することが条件です。遺産共有の場合は、相続開始から10年を経過していることが必要です。裁判所に出す書類は、専門家に相談してください。
Q. 返事をしない共有者がいます。どうなりますか?
返事をしない共有者がいるときは、管理に関する事項について、裁判所の決定を得て、その共有者以外の持分の過半数で決められます。売却や、持分を失う行為には、使えません。
Q. 自分の持分だけを売ることはできますか?
確認した民法の条文には、持分の譲渡に、他の共有者の同意を求める定めは見当たりませんでした。ただし、「同意なしに売れる」と明示した法務省の資料は、確認できていません。買い手が付くか、いくらになるかの公的な目安も、確認できませんでした。持分を取得した人は、新しい共有者として、分割を請求できます。手放す前に、司法書士・弁護士へ相談してください。
Q. 共有者が多すぎて、全員が誰か分かりません。
戸籍で、相続人を調べます。登記簿の名義人の相続人を、順にたどる方法です。数次相続になっていると、人数が増えます。調べても所在の分からない人がいるときは、上の制度の比較を見てください。
Q. 共有の実家に、きょうだいの一人が住み続けています。
共有物を使う共有者は、別段の合意がなければ、自分の持分を超える使用の対価を、他の共有者に償還する義務があります(民法249条2項)。無償とする合意があれば、その合意に従います。話し合いの内容は、書面に残してください。
Q. 司法書士や弁護士を紹介してもらえますか?
当サイトは、専門家を紹介して、紹介料や報酬を受け取ることはありません。相談窓口は、上の表のとおり、公式のページで確認できるものを載せています。
Q. 国に引き取ってもらえますか?
土地だけなら、相続土地国庫帰属制度があります。相続や遺贈(相続人に対する遺贈)で取得した土地が対象です。共有の土地は、共有者全員が共同で申請します。相続等以外で持分を取得した共有者も、共同で申請できます。建物がある土地は、申請できません。審査手数料と負担金がかかります。金額は、法務省の案内で確認してください。
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出典
確認日はすべて2026年10月11日です。
- 法務省民事局「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(PDF) https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
- 法務省民事局「民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要」(令和8年9月版、PDF) https://www.moj.go.jp/content/001444016.pdf
- e-Gov法令検索「民法」(第25条、第206条、第249条〜第258条の2、第262条の2、第262条の3、第264条の2、第264条の8、第898条、第904条の3) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(第2条) https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000025
- 法務省「相続登記の申請義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
- 法務局「登記識別情報は、どのような場合に必要になるのですか?」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/000130983.pdf
- 東京地方裁判所「所在等不明共有者持分取得申立てについて」 https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/00-3_setumei_shozaihumeikyoyusha-motibunshutoku.pdf
- 東京地方裁判所「所在等不明共有者がいる場合の共有物管理・変更の申立てについて」 https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/00-1_setumei_shozaihumeikyoyusha-kyoyukanri.pdf
- 新潟地方裁判所「裁判手続を利用する方へ」(郵便料及び予納金一覧、申立書提出先一覧) https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/index.html
- 新潟地方裁判所「窓口案内」 https://www.courts.go.jp/niigata/saiban/madoguti/index.html
- 新潟地方裁判所「郵便料及び予納金一覧(地方裁判所)」(PDF、令和8年5月21日〜) https://www.courts.go.jp/niigata/vc-files/niigata/dc20260521dckitte.pdf
- 裁判所「民事調停」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_01/index.html
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国土交通省「標準媒介契約約款」(最終改正 令和6年4月1日、PDF) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001723420.pdf
- 新潟県司法書士会「相続登記相談センター」 https://niigata-shiho.net/souzoku/
- 新潟県弁護士会「弁護士に相談する」 https://niigata-bengo.or.jp/consultation/
- 法テラス(日本司法支援センター) https://www.houterasu.or.jp/
- 新潟県「にいがた空き家管理活用サポーターに相談してみませんか」 https://www.pref.niigata.lg.jp/site/toshiseisaku/niigata-akiya-supporter-soudan.html
- 新潟県「冬季における空き家からの落雪や倒壊にご注意ください」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/toshiseisaku/akiya-jyosetsu.html